《私の本棚 第三十三》    1999年(平成11年)12月

    「夢十夜」    夏目漱石 作

 夏目漱石といえば「坊ちゃん」というイメージが大変強いのですが、「吾輩は猫である」 「虞美人草」 「草枕」 等を立て続けに発表していた頃の作品の中で、夢十夜は趣が異なります。こんな夢を見たと読者に話しかけますが、その中身は現在の 「私」 と過去の世界が融合していて、何か新しいものを模索しているようにもとれます。
 第六夜は運慶が護国寺の山門で仁王を刻んでいるのを見て、自分もやってみるが失敗します。私は、運慶の鑿さばきを表現しているところが気に入っています。「運慶は今太い眉を一寸の高さに横へ彫り抜いて、鑿の歯を堅に返すやいなや斜めに、上から槌を打ち下した。堅い木を一刻みに削って、厚い木屑が槌の声に応じて飛んだと思ったら、小鼻のおっ開いた怒りの鼻の側面がたちまち浮き上がってきた。」 見物人は、あれは鑿で作るのではなくて、単に木の中に埋まっているものを掘り出しているだけだから、間違うはずはないと言います。正に名人芸の極みです。
 
あんな本こんな本、あんな本サイクリング、和佐又山、紅葉,もみじ





   奈良県 和佐又山

 山裾には1本のモミジが燃えさかっていました。

 数センチの実生を1本頂戴しました。1.5メートル位になったのですが、何分狭い敷地に植えましたので塀を傷めることになり、更に実生から植木鉢へ引っ越しを致しました。

 1779.9メートルの頂上からは大峰山頂が望めます。



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 (1)倫敦塔  (2)カーライル博物館  (3)幻影の盾  (4)琴のそら音    (5)一夜   (6)薤露行  

   (7)趣味の遺伝   (8)坊っちゃん   (9)吾輩は猫である  (10)草枕   (11)二百十日  

   (12)野分   (13)文学論   (14)虞美人草   (15)坑夫   (16)文鳥     (17)夢十夜  

   (18)三四郎   (19)永日小品   (20)それから   (21)満韓ところどころ   (22)門  

   (23)思い出すことなど   (24)彼岸過迄   (25)行人   (26)こころ   (27)私の個人主義  

   (28)硝子戸の中   (29)道草   (30)明暗