《私の本棚 第四十一》   2000年(平成12年)8月

      「山椒大夫」  森鴎外  (参考) 

 

安寿恋しや、ほうやれほ

厨子王恋しやほうやれほ

鳥も生あるものなれば

疾う疾う逃げよ、逐わずとも
 

 山椒大夫の題名で聞いても思い浮かばない人も、安寿と厨子王の話と聞けば、民話絵本を思い出す人も多いと思います。
筑紫に赴任して音信不通となった父を捜すため、母と小さい姉弟と女中の四人が旅に出ます。幾日もたたない直江津の海上で人買いにさらわれ、女中は入水、母は佐渡島へ姉弟は丹後の由良に売られます。後に安寿は厨子王を逃亡させて、自分は入水します。冒頭の四行は、厨子王が成人し立派な身分になってから母親と対面する場面での、母の鳥逐い歌です。最近の小学生位までの子供は、こういった類の本をあまり読まないのでしょうか。
 森鴎外は医学博士・文学博士・軍医総監であり、美術にも造詣の深い人でした。「余ハ石見人森林太郎トシテ死セント欲ス」 と遺言し、津和野に生まれた一個人として逝きました。

 
たらい船,佐渡






 佐渡のたらい船
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