《私の本棚 第百六》   平成18年1月

       「送元二使安西」   王 維 
(盛唐) 

  漢詩、七言絶句。探しました、凡そ十年探しました。 この詩に触れたのは十五、六歳の時です。題名は忘れていましたし、作者は李白、と記憶違い。 起句の渭城と結句の陽関を思い出すことができませんでした。 何故この詩が、それ程印象に残ったのか分かりません。 強いて言うなら、子供の心にも残るほどの名作ということなのでしょう。
 
   【送元二使安西】

渭城朝雨浥軽塵

客舎青青柳色新

勧君更尽一杯酒

西出陽関無故人
【元二の安西に使するを送る】

渭城の朝雨
軽塵を浥し (いじょうのちょううけいじんをうるおし)

客舎
青青 柳色新たなり (きゃくしゃせいせいりゅうしょくあらたなり)

君に勧む
更に尽くせ一杯の酒 (きみにすすむさらにつくせいっぱいのさけ)

西のかた陽関を出づれば故人無からん

    (にしのかたようかんをいずればこじんなからん)
 
 【背景】

  渭水(川の名)を挟んで長安と渭城(現、咸陽)がありました。安西はシルロードを西へ、現在のタクラマカン砂漠
  に残 る遺跡、敦煌、楼蘭、玉門関などの更に西にあります。この時代の見送りは、数日間共に旅をし別れを惜しむ
   ことも多かったようです。別れに際しては、楊柳の枝を折って輪にし たものを贈り、行く人の旅の平穏を祈る習わし
  があったといいます。    約千三百年前の作です。


 【訳】

    
渭城の町は昨夜の雨が土埃を洗い流し、空気もしっとりとしている
    旅館も清々しくさっぱりし、前の柳も塵を洗い落とされ尚一層青々と見える
    元二君、さあ、最後にもう一杯僕の杯を受けてくれ
    遙か西、陽関を出たならば、そこにはもう気心の知れた友達は一人もいないのだから

 
平城京、朱雀門





  平城京  朱雀門


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