《私の本棚 第七十五》   平成15年6月 

     「古 都」
  川端  康成  

  昭和36年10月から37年1月まで朝日新聞に連載され、その挿絵は小磯良平氏が描いた作品。この36年には文化勲章を受章、43年にはノーベル文学賞を受賞し、その後書けなくなって47年に自殺をしています。 「古都」 執筆中は、長年服用していた睡眠薬を飲みながら書くという濫用の状態で、書き終えた後入院をしています。退院後は何を書いたのかよくは思い出せなかったと言っています。

 主人公千恵子は捨て子だったが、呉服問屋の娘として成長。ある日偶然に自分は双子であり、もう一人の苗子は北山杉の里に天涯孤独となって暮らしている事を知る。京の町や祭りを舞台に姉妹の心の交流を描いています。作者は 「人物を書こうとしたのか、京都の風土を書こうとしたのか、どちらかと言えば風土。」 と言います。作者がそういうくらいですから当然ですが、私はどちらともいえない作品だと思います。京言葉と風景描写、更には姉妹の関わり方で雅な世界を表現するかと思えば、ふと、作者らしい耽美的な情景描写或いはそれを連想させるような箇所があります。

 私としては、完全に優雅なままの方が良かった
……と感じます。 
美山・茅葺きの民家





 京都府美山町 茅葺きの里


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