《私の本棚 第六十一》  平成14年4月 

      「干草の月」   ヘルマン・ヘッセ  

 ヘッセはドイツの作家で、1946年にノーベル文学賞を受賞。1962年に八十五歳で亡くなりました。子供の頃は勉強が人一倍でき、神学校に入学 (エリートコース) しますが、自分の肌に合わず中退。その後入学した高校も中退します。要するに親たちが希望するコースを歩くことが自分には合わず、かといって何をすればよいのか分からない定まらない青年でした。

干草の月は七月の別名ということです。家畜にやる草を刈って干す月であるところからきているそうです。十五六歳の主人公 パウルは広大な屋敷で家族や家庭教師と共に夏休みを過ごしています。ある日父の友人がはるばる遊びに来ます。一緒に来たのは同年齢のベルタ嬢と二十二三歳のツスネルデ嬢。パウルはお姉さんに淡い恋情を抱きます。彼女の手が居眠りしている自分の手に添えられたとき(いたわりから)、「…不意を襲われた泥棒のようにびっくりして、震えだしたが、手を引っ込めはしなかった。息もできないくらい、心臓は激しく鼓動していた。全身が燃えながら、同時に寒気がした。…」  
  私たちが忘れてしまって取り戻すことのできない純真な数日間が、干草の匂いと共によみがえります。 
桜並木






  八幡背割堤

 (桂川・宇治川・木津川の
  三川合流地点)

 平家物語







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