《私の本棚 第三十一》    1999年(平成11年)10月

     「変 身」     カフカ 作

 「ある朝、グレゴール・ザムザがなにか気がかりな夢から目をさますと、自分が 寝床の中で一匹の巨大な毒虫に変っているのを発見した。」 という書き出しで始まるこの作品は、怪奇小説ということも出きますが、なにかそれだけでは説明し切れないものがあります。フライというアメリカ映画に、物体を転送する機械を発明した人が、機械に紛れ込んだ蝿に変身してしまうというものがありましたが、そう言ったものとも少し違います。
 一家の経済的柱であった長男が、ある朝突然ゴキブリ風の虫に変身しています。驚きと困惑の中で、両親や妹は一生懸命世話をしつつ生活をしています。非日常的な出来事と日常的な生活を淡々と書いている所が、読者をしてどう評価して良いのか分らなくしています。色々な解釈はあるとは思いますが、私は主人公の精神的変心というように感じます。それまで一応まとまりのあった家族の、親子・兄弟・夫婦と言った関係が知らず知らず変化し、突然表面化する。そんな暗示のように思うのですがどうでしょうか。
 
蓮





 
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