《私の本棚 第十二》    1998年(平成10年)3月
 
    「清兵衛と瓢箪」  志賀直哉  作

 数多くの短編を著していますが、この作品もそのうちの一つです。物語は12歳の小学生で、格別に取り柄もない清兵衛が瓢箪に熱中しているのを、両親も教師も快く思っていない。ある時父親と客が「馬琴の瓢箪」の話をしているのを聞いていて、あんなものは大したものではないと口出しをして叱られる。更には、自分が店先で十銭で見つけた瓢箪に熱中し過ぎたため、教師に取り上げられてしまう。 教師は家庭訪問で親に注意をし、父親は怒りのあまり、清兵衛の瓢箪をみんな砕いてしまう。教師に取り上げられた瓢箪は、用務員の手に渡り、用務員から骨董屋に 50円 (四ヶ月分の給料程度) で売られる。骨董屋はさらに600円で豪家に売ってしまう。 清兵衛は今度は、絵を描くことに熱中している。
 物語はそれだけですが、現在の偏った価値観の中で悩んでいる子供たちにも、なにかしら安心感を与えるようにも思います。ちなみにこの作品は、滝沢馬琴を愛読する父親が 、志賀直哉 (参考)が小説を書くことに反対していた事への、メッセージでもあると言われています。 
瓢箪





  高さ30pを超える見事な瓢箪

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