《私の本棚 第百三》   平成17年10月    

   「おーい老い!」  熊谷 栄三郎  

 京都大学仏文科卒、京都新聞論説委員等を歴任。エッセイスト。本書は京都新聞に連載されたものをまとめて出版されたものです。理屈抜きで暖かく面白い。連載されたものですから、一編ごとの文字数も少なく、共感を得ることのできる話ばかりと言っていいでしょう。「随筆」 というのは、体験や感想を思いつくまま記した文章です。小賢しく自分の知識をひけらかすのではなく、それを隠し味にしながら肩がこらないような文章にする。それでいて 「うんうん」 とうなずけなければいけない、と思います。
 この本を読んでいると、寺田寅彦氏の随筆のことが浮かんできた。氏は物理学者であり随筆家。高校の国語教科書にも取り上げられているのではなかったでしょうか。学者の目線で対象を観察しているが、文学で表現しています。一方はジャーナリストもう一方は学者と、バックが異なりますから文章を読んだ時の印象はかなり違います。

 どちらもすてきな随筆だと思います。
 
秋の曽爾高原





   曽爾高原

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